糖尿病と歯周病

歯周病は全身の健康と関わっています

歯周病は歯の表面につくプラーク(歯垢)によって起こる、歯の周りの病気で、歯肉炎と歯周炎の総称です。
歯肉炎(歯ぐきの炎症)が最初の段階で、更に炎症が歯を支える骨(歯槽骨)や靭帯(歯茎膜)へ進行すると歯周炎となり、歯槽骨が吸収するに従って歯がグラグラ動くようになり、最終的には歯を支えることができなくなって抜歯になります。

歯周病の特徴は気づかないうちに進行していくことです。痛みや腫れが少ないために歯がグラグラしてくるまで放置してしまう場合が少なくありません。

歯周病患者の口腔
(上:治療前、下:初期治療後)



歯周病は多くの成人がかかっている病気ですが、小中学生などの低年齢層にまでも広がりを
見せてきています。そして近年では、歯周病が生活習慣病などの全身の疾患と関連していることも
分かってきました。
例えば糖尿病や早産・低体重児出産、心循環器疾患、脳血管障害、呼吸器疾患などの病気です。
歯周病は口の中だけの病気ではなく、全身の健康と強く関わりのある病気なのですが、一般の方々
にはその事情がほとんど知られていないのが実情です。



我が国の糖尿病の多くは生活習慣病!

糖尿病は血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が高い状態(高血糖)が慢性的に続く病気で、
特有な症状として、口渇・多飲・多尿・体重減少があります。
高血糖になる原因は、エネルギー源であるブドウ糖を細胞に作り込む時に必要な「インスリン」
というホルモンの量や作用が低下して、ブドウ糖が血液中に溢れるためです。
インスリンの作用が低下する原因として、遺伝的な要素や加齢、体に負担となる生活習慣などが
挙げられます。糖尿病には1型糖尿病、2型糖尿病や遺伝子の異常や他の病気が原因となるものが
ありますが、特に2型糖尿病は食事や運動などの生活習慣病が関係している場合が多く、
我が国の糖尿病の95%以上はこのタイプです。

糖尿病は成人だけの病気とは限りません。1992年に聖マリアンナ医科大学の研究グループが、
ペットボトル症候群と呼ばれる病気(正式名称:清涼飲料水ケトーシス)を報告しています。これは、
スポーツドリンクや清涼飲料水などを大量に飲み続けることによっておこる急性の糖尿病です。
糖尿病性ケトアシドーシスの症状となった若い人達の多くがペットボトルで清涼飲料水を飲んでいた
ことから名付けられました。このような事例からも、糖尿病が生活習慣病であることが理解できると
思います。


歯周病は糖尿病の合併症!

糖尿病により慢性の高血糖の状態が長く続くと、合併症を発症する確率が高くなります。
近年「網膜症」、「腎症」、「神経障害」、「心疾患」、「脳卒中」に次いで「歯周病」は
6番目の合併症としてとらえられるようになりました。


糖尿病が歯周病を引き起こし易くするのは...
  1. 1.血流が悪くなる
    糖尿病によって高血糖状態が続くと、血液の流れが悪くなります。口の中の色はピンク色です。
    それだけ口の中は血管が密集しているということで、高血糖の影響を受け易いわけです。
  2. 2.白血球機能が低下する(特に1型糖尿病で)
  3. 3.唾液や歯と歯肉の間からの滲出液の中の糖分が高くなる
  4. 4.唾液が減り、口の中が乾燥する
    2~4は、むし歯は歯周病を起こす細菌が繁殖し易い環境を作り出します。
    また、歯周組織を修復するコラーゲン代謝機能に起き、歯周病が進行し易くなります。
  5. 5.細菌に対する抵抗力や組織の修復機能が低下し、歯周病になり易くなります。
    (糖尿病の方はそうでない方に比べて、歯周病になる危険性が2.32倍高いという統計が
    アメリカで報告されています。)

歯周病が悪化すると...
  1. 1.歯周病の炎症によって出てくる物質が、インスリンの血糖値をコントロールする働きを妨げて、
    糖尿病の状態を悪くすると言われています。
  2. 2.歯周病で歯に痛みがあったり、歯を抜いたままの状態では、きちんとバランスよい食事が
    できなくなり、食事療法が正しく進められなくなります。

つまり、糖尿病が悪化することによって歯周病が悪化し、更に糖尿病を悪化させてしまうという
悪化のスパイラルが起きてしまうのです。

この悪化のスパイラルを断ち切るために、糖尿病と歯周病の治療が必要です。
例えば糖尿病の方が歯周病の治療をすることにより歯周組織の炎症が改善すると、インスリンが
働き易い状態になって、血糖コントロールが改善する可能性があることが報告されています。


糖尿病・歯周病それぞれ治療中の方へ

糖尿治療中の方へ

血糖値のコントロールに加えて、歯周病の予防と管理に人一倍の注意が必要です。

◆歯周病チェックリスト・こんな症状に要注意

□ 歯が浮いたような感じがする
□ 歯ぐきに赤く腫れた部分がある
□ 歯磨きの後、出血することがある
□ 歯ぐきから膿が出る
□ 口臭が気になる
□ 歯の間に食べ物が詰まり易い
□ 歯ぐきがやせて下がってきた
□ 少しグラつく歯がある


歯周病治療中の方へ
定期的検診・自己管理に加えて、糖尿病の検査をお薦めします。


◆糖尿病チェックリスト・こんな症状に要注意

□ このごろ太ってきた
□ よく食べているのに痩せてきた
□ とても喉が渇く
□ 尿の回数・量が増えた
□ 尿の臭いが気になる
□ だるくて疲れ易い
□ 肌がかゆい、かさつく感じがする
□ 家族・親類に糖尿病の人がいる


糖尿病と歯周病に共通する予防対策




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